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第19話
賑やかしに点けたテレビから流行りの曲が流れる。
どんな曲が流行った、どのグループが流行った、もう数時間で終わる平成とはどんな時代だったのか、そんな番組ばかりだ。
無事に産まれた末っ子と母親に安堵したのか何時もの穏やかな笑顔を称えた三条は長岡の隣で本を読んでいる。
BGMにしては激しいアップテンポな曲が目立つが、耳障りではない。
寧ろ、記憶に直結する曲もある。
体育祭で踊ったな、文化祭準備時に女子達がBGMに使っていたな。
そんな記憶を彩る曲はこれからも増え続けていく。
「懐かしい歌だな。」
長岡の声にテレビを観ると絶賛再ブレーク中のグループがヒット曲を歌っていた。
再ブレークを果たしたカバー曲とは真逆にしっとりとしたラブソング。
「?
どうかしましたか?」
「これ、遥登が生まれた年のじゃねぇか。」
テレビ画面の隅には確かに2000年と表示されている。
「本当ですね。」
「しっかし、2000年生まれてって改めてすげぇよな。
ミレニアムベイビーだろ。」
「それ、久し振りに言われました。」
A組の大方がそうだ。
早生まれも世紀末ベイビー。
年齢計算が早く出来るだけで、ミレニアムベイビーだからと言っても特に何かある訳でもないのに大人達はそう呼ぶ。
きっと成人式を向かえる2020年は、プレミアベイビーが成人式を向かえますとニュースキャスターが伝えるんだろう。
今からうんざりする。
「俺はもっと早く生まれたかったです。
正宗さんの小学生の時見たかったし、制服姿だって見てみたかったです。」
「奇遇だな。
俺も遥登のランドセル背負ってる姿見てみたかった。」
決してみる事の出来ない過去の姿。
想像する事しか出来ない。
どうしようも出来ない差が悔しい。
「何色のランドセルだったんだ。」
「俺は普通の黒でした。」
「へぇ。
可愛かったんだろうな。」
「正宗さんは…?」
「俺も黒。」
でも、話ながら少しずつ知れたら楽しい。
埋まる事のない歳の差だが、その差の分だけ知りたい事が沢山ある。
その分だけ、知れる事がある。
「中学の制服は学ランですか?
ブレザー?」
「遥登からキスしてくれたら答えてやる。
どうする?」
「……狡いですよ。」
「知らなかったか?」
頬に唇をくっ付けると、口じゃねぇのかと笑われたが口なんて限定しなかったと言えばしかたねぇなと教えてくれた。
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