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第23話
特売の鶏肉をぶつ切りにして熱したフライパンで焼く。
皮がパリッとしてきたら長葱を追加し、醤油や砂糖で適当に味付けをしていく。
換気扇を回していても部屋中に醤油の焼ける香ばしいにおいが漂い、隣からはアツい視線が注がれる。
人一倍食べるし、食べる事が好きな恋人にはたまらないにおいなのだろうと容易に想像出来る。
長岡自身は自分の料理に美味いも不味いもない。
自分好みの味付けであるだけ。
だが、その味付けが三条には塩梅が良かった。
「手ぇ切んなよ。」
こくんと頷いた恋人は葱の青いところを刻んでいく。
隣の小鍋に味噌を解くと三条の椀に少し注ぎ、味見を促した。
執拗に冷ましてから飲むと表情が変わる。
多分、味は大丈夫だ。
「美味しいです。」
「うし。
じゃあ、飯食うか。」
丼飯の上に鶏肉を乗っけると三条は嬉しそうに箸とマグを並べに行った。
その間に冷蔵庫からこっそりと取り出したモノを2つ握る。
そして、三条が戻ってくると早々にそれを見せた。
「おまけ。」
「…っ!」
パカッと割り落としたのは温泉たまご。
これも特売だった。
「美味そうっ!」
「あったかい内に食おうな。」
ぶんぶん尻尾を振った三条に満足気な笑みを見せる長岡はやっぱりご機嫌だ。
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