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第50話
誕生日だから良いと言ったのに洗い物をはじめた三条に甘え、長岡は風呂掃除を済ませた。
今日位甘えれば良いと言ったが、笑顔で拒否された。
それは違う、と。
遥登らしいと言うか、義理堅いと言うか。
そういう真面目な所を含めて好きなんだと実感する。
「そういや、南の中華屋行ったか?」
「はい。
田上と麻婆丼食べました。
正宗さんが教えてくれた通り量が多くて学生には有り難いですね。」
大学の話を聴かせてもらっていると湯が沸いたと知らせた。
折角の時間を割り割くアナウンスに長岡は早々と腰を上げる。
「遥登、風呂一緒に入ろうか。」
「え…?」
「はい、決定。
タオルとパンツと、服は俺が持ってくから先に風呂行っててくれるか。」
「あの…、」
少し強引過ぎたかと三条と目線を合わせしゃがみこんだ。
無理強いはしたくはない。
折角の誕生日を大切にしたい。
三条は、長岡の手を掴むとおずおずと口を開く。
「ま…ってます、から…」
思わず口元が緩んでしまった。
「一緒に入ってくれんのか?」
こっくん、と上下する頭を撫でると三条は気持ち良さそうに目を細める。
耳から頬、そして最後に首筋に触れてから手を離した。
もう終わり…?とでも言いたげな目が向けられたが、これから一緒に風呂に入るんだからこれ以上のふれあいが出来る。
期待させる様に唇ではなく、額にキスをすると恨めしそうな顔が返ってきた。
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