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第60話
小さな部屋の中にベッドの軋みと淫らな声がいっぱいに満ちている。
しあわせでたまらない空間。
もうすぐ日付が変わりそう。
隣の部屋から三条のスマホがメッセージの着信を知らせたが2人は止まらない。
「きもち?」
三条は、こくこくと頷いた。
気持ち良い。
溶けそうな程気持ち良い。
長岡を見上げる目がそれを伝える。
色っぽく細められる目に後孔がきゅぅっと締まってしまった。
感じているのがバレれてしまう。
「じゃ、さっきのお返しっ」
グンッと腰を突き入れられ、一気に息を吐いてしまった。
はっはっ、と浅い呼吸を繰り返し必死に酸素を取り込む。
「ぐッ…ぅ…、ぅ…」
今度は、肩口に顔を埋め歯をたてられた。
やわらかい皮膚に食い込む歯。
滲む血。
それすら快感だ。
「すげ、きもち」
毒された身体は恋人と触れ合う所から快感を拾い、長岡にも伝える。
気持ち良い
愛してる
しあわせです
「き、もち……きもちぃ…お、れも」
悲しくないのに涙が滲み、口が上手く回らない。
上手く伝わっているか不安だったけど、それはすぐに無意味な心配だったと知る。
「遥登、愛してる」
たった5文字の言葉。
そこに含まれる沢山の愛情と、沢山の意味が、三条を満たす。
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