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第71話

一言二言会話を交わすと、小さな頭が教室からゾロゾロ出てきた。 懐かしい時間はもうおしまい。 目の前の元教え子も僅かに表情を変えた。 今日は部活に顔を出すつもりでいたが、定時をむかえたらすぐに帰りたくなる。 生徒の影に隠れトンッとポケットを突いたが気が付いただろうか。 …なんて、杞憂だ。 目の前の元教え子は尻尾が隠しきれていない。 「じゃあ、行くな。 勉強、頑張れ」 「はい。 失礼します」 「失礼します」 去り際に、とんっと手の甲をぶつける。 清潔なにおいが風に混ざってやってきた。 愛しいにおい。 「先生、誰ですか?」 「前の学校での生徒ですよ。 自慢の」 「へぇ。 カップルですか? 彼氏の方、細いですね。 ガリガリ」 馬鹿言え。 細い方は、俺のだ。 「ほら、次の教室行きますよ。 迷子になったら校内放送お願いしますから気を付けてください」 「ぇ…」 中川の彼氏、なんて言うから少し意地の悪い事を言う。 ま、本当の事なんて当人同士が知っていればそれで良い。 教えてなんかやらねぇけどな。

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