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第89話
「明日になったら優等生の顔で大学通ってんだろ。
たまんねぇ…」
「国語の先生の語彙ですか…」
「今は遥登の恋人ですよ」
上顎を舐められたり啄む様なキスを何度も繰り返していると、比較的近くに自動車が停止した。
エンジンが切られ、子供の声がする。
それに続く大人の声。
三条はびくっと肩を跳ねさせてくりくりした目を長岡に向けた。
長岡は三条を隠す様に覆い被さるとじっと動きを止めて、気配に気を配る。
会話から同じく天体観測に来た親子連れの様だ。
楽しそうな声は次第に遠ざかって行った。
「焦った…」
何度も頷く三条を安心させるよう頭を撫でる。
さらさらで指通りが良い。
「…カーセックスはお預けか」
「する気だったんですか…っ」
「遥登も燃えんだろうなぁ。
なんせ露出の気があるし。
とろっとろになって腰揺らすんだろ」
「本当に捕まりますよ…」
冗談混じりに話すと三条は少し表情を砕けさせた。
やっぱり三条にはやわらかい表情の方がよく似合う。
そして、好きだ。
「じゃあ見付かんねぇうちに出るか。
デート兼ねて遠回りすんぞ」
「あの…」
「ん?
どうした」
「もう1回、キス…したい、です…」
折角リクライニングを直したが、可愛い恋人のお強請りは叶えてやりたい。
シートベルトに触れるフリをして、ガリガリな三条のやわらかな部分に触れる。
小さなリップ音と共にもっとやわらかな表情の恋人が見えた。
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