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第90話

ぷくぷくの綾登は美味しそうにミルクを飲む。 そりゃぁ、美味しそうに。 「お、沢山飲んだな。 綾登は良い子だなぁ」 飲み終わるとゲップをさせて、ベッドに寝かせた。 「綾登? 綾ぁ…」 綾登はご機嫌で兄の服をしっかりと握り離そうとしない。 綾登は優登の血が濃いようだ。 もうすぐ家を出る時刻。 手を離して貰えるように頬をつついて興味を他へと逸らす。 だが、綾登は兄に構って貰えた嬉しさで更にご機嫌になった。 あぁ、でも、可愛い。 優登の面影がある。 「綾登、俺大学行かないとなんだよ。 手、離してくれると嬉しいなぁ」 今日はゆっくり出来ると言っても、もうそろそろ出ないと間に合わない。 ご機嫌な綾登をぐずらせる訳にも居ないし…と辺りを見渡す。 オルゴールに手を伸ばし、ぜんまいを巻くと可愛らしい音が辺りを包んだ。 手足をバタつかせる綾登をもう1度抱き上げ、やわらかく小さな身体からミルクのにおいを分けて貰う。 漸く離されたその部分は皺になり少し伸びていたが、まぁ良いか。 「ありがと。 綾登、いってきます」 「遥登、まだ居たの?」 「もう行く。 いってきますっ」 弟をベッドに寝かし、代わりにリュックを掴むと家を出た。

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