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第91話
長岡は準備室に誰も居ないのを良い事に椅子に座ったまま手足を伸ばし伸びをした。
やっぱり連続授業は腰に来る。
黒板が低い。
教卓も低い。
だけど、古典に触れる事が出来るこの職業は天職だ。
好きな物に触れる事が出来るばかりか、その素晴らしさを広める事も出来る。
そして、知ってくれた生徒が自分と同じ道に進んでくれると言うしあわせ。
怠いと思う事も多いがやっぱり好きだ。
新たな定位置がすっかり馴染んだ写真立ての中の笑顔が今日も背中を押してくれる。
卒業式に貰ったネクタイはあの日以降着けては居ないが、ネクタイも新しい定位置がある。
寝室の本棚の上段。
専用の収納ケースを買い、大切に保管されていた。
それを見付けた恋人は着ければ良いのにと笑ったが、流石に仕事用には可愛らし過ぎる。
着けるなら、A組が揃った時だ。
胸元で太陽光を反射させるタイピンは毎日欠かさず着けるが、あのネクタイはあそこが良い。
その隣がこのピンの保管場所だから、毎朝着用する際に目に出来る。
だから、そこが良い。
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