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第92話
学校帰り、いくつか離れた駅の待合室で時間を潰しているとポケットの中が震えたのでそれを合図に三条は外へ向かう。
見慣れた車はすぐに目に入り後部席へ乗り込んだ。
「よ、お疲れ」
「正宗さんこそお疲れ様です。
早かったですね」
「定時に上がったら道路空いてたんだよ。
やっぱりどこも定時じゃ帰れねぇんだな」
あんな仕事に打ち込んでいた父は、弟の誕生を機に定時上がりが増えた。
一緒にいる時間を増やしたいらしい。
そして、折角男性育休制度があるのだからそれを使い兄達2人の時に出来なかった事をしたい、と。
運転席の長岡をちらりと見る。
セットされた髪もスーツも格好良い。
あんなに毎日見ていたのに、進学してからはめっきり見る機会も減ってしまった。
今のうちに堪能しておこう。
真面目な長岡先生の姿も大好きだ。
「その紙袋の中身やるよ」
「え、ありがとうございます」
チラリと紙袋の中を覗けば衣服のようだ。
紺色のジャケット…?
「じゃあ、行こうか」
「はい、お願いします」
今日はこらから、楽しい楽しい放課後デート。
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