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第93話
車のまま中に入れるホテル。
それがどんな場所なのか、三条だってその位の知識はある。
「人来ない内に入んぞ」
「え……、でも」
だって、此処はただのホテルじゃない。
それに、長岡は仕事姿のままだ。
キャップを被っている自分とは違う。
「ほら、早くおいで」
「……はい」
初めて入るホテルに緊張が走る。
男同士で入店拒否されたって話聞くし…
大丈夫なのか…
震える脚を必死に隠す。
その時、視界の端に商談の文字が見えた。
あ…
ちらりと長岡を見上げると目が合った。
ニヒルな笑みに手にした紙袋を握る手に力が入る。
そうだ、長岡が何も考えてない訳なかった。
普通のホテルのフロント、とは言いがたいが思ったよりいやらしい雰囲気はない。
清潔感もある。
案外、普通なんだ
外見が城とかのイメージあるから変なの想像してた…
何も言われる事なく鍵を借り2人はエレベーターに乗り込む。
田舎で育った三条には何処もかしこもカメラが自分を向いているのが居心地が悪いが、それ以上に緊張と恥ずかしさでソワソワしてしまう。
それに気が付いたのか長岡は三条のキャップに触れ、深く被せた。
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