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第94話

誰にも会わずに部屋まで行けたのは良いが部屋を見渡して息を飲んだ。 ベッドの横に机と椅子、黒板に教卓。 まるで教室の様な一角。 「え…、いや、ここ…」 直視出来ない。 初めてのラブホテルがまさかこんなマニアックだなんて思いもしなかった。 「気に入らねぇ? 部屋変えるか? あとこんな部屋ばっかだけど」 そう言って見せられたスマホ画面にはオフィスや病院を模倣したもの、怪しいピンクの照明で彩られた部屋ばかり。 首を横に降って否定する。 多分、此処が1番マシだ。 ピンクの照明が1番生々しく部屋を移動するなんてとんでもない。 病院セットはベッドが生々しく、大きなガラス窓が印象的なオフィスセットはきっと露出の気があると攻められるのが想像出来た。 と言うか、どのセットも本格的過ぎる。 長岡は手に持っていた紙袋を取りソファに置くと夏用のジャケットを隣にかけた。 「シャワーは…先借りるな。 後の方が良いだろ」 そして、頭を撫で長岡は浴室へと消えて行った。

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