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第120話
駐車場から見上げた部屋は電気が点いていない。
階段を駆けるのも、靴を脱ぐのももどかしい。
三条の靴が何時もより乱雑に並べられている。
「遥登」
廊下をずんずんと進み朝と同じく開けっぱなしのドアから室内へと侵入して、真っ白な足を見付けた。
「遥登…っ」
はっとして近付くと、ソファとローテーブルの間で丸くなっている三条にほっと息を吐いた。
倒れた訳ではなさそうだ。
丸くなっているだけの様。
つぅか、ソファですらなかった
熱は、…ねぇのか?
暑くてよくわかんねぇな…
顔色は少し白いか…
額や首にそっと触れながら顔色を確認する。
開けられた窓から申し訳程度の風が入るだけで室内には熱が籠ってる。
ローテーブルの上に置いたままのエアコンのリモコンに手を伸ばす。
よく見ると三条が顔を埋めている黒い物に気が付いた。
タオルかと思ったが一見して違う。
これ、俺のシャツじゃねぇか
体調不良で心細かったのか、人肌が恋しかったのかしっかりと抱いている。
汗をかいたシャツだが三条にはその方が良かった。
恋しい人の帰宅を待ちわびる間に眠ってしまえば、気持ちが悪い事も感じない。
時間もあっという間に過ぎていく。
健気な恋人を長岡は慈しむ。
庇護欲とはこういう事を言うのか。
起こしてしまわない様にそっと頭を撫でた。
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