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第119話

心配な連絡に気が付いたのは定時にはまだ早い時間の事だった。 進学者対象の勉強会用のプリントを印刷して戻ってきた長岡に、同僚がそういえば震えてましたよ、と出しっぱなしにしていたスマホへの連絡を教えてくれて何気無く覗いたその画面。 『体調が優れないので少し部屋で休ませてください』 あの遥登が体調が悪いと助けを求めてきた。 くそ、1時間も前じゃねぇか 休んでんだろうな… でも、あの遥登だしな 1学年だった頃のあの真っ青な顔が頭を過る。 日焼けしにくい肌を更に真っ青にして、少しは楽になったなんて言っていた。 今日も、ギリギリまで我慢したに違いない。 部屋の合鍵は渡してあるし、冷蔵庫の中には麦茶が入っている。 自由に使って良いとも言ってある。 だが、“あの遥登”だ。 ベッドで休んでいるとは考えられない。 良いところソファだろう。 自分がいない状態で、確認連絡もなしに冷蔵庫を開けるのもほぼ考えられない。 急いで簡単なメッセージを打ち込んでいく。 『冷蔵庫の中に麦茶あるから飲め』 「長岡先生、大丈夫ですか? 眉間に皺寄ってますよ」 「あぁ、すみません…。 大丈夫です」 「緊急とかじゃ…」 「あ、いえ…、少し考え事をしていまして…」 既読の着かないメッセージは三条に届いているのだろうかと定時になるまで落ち着かなかった。

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