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第151話
先週は最高気温を更新し流石にぐったりしたが、盆が終わるとその気温も落ち着いた。
最高で40度近くあったせいか、32度でも涼しいと思う程温度感覚がバグっている。
これが、8月末の例年通りの気温なのだとニュース番組の天気予報で聞いて思い出した。
コンビニに寄り飲み物とアイスを買い、足早にマンションの階段を駆け上がる。
1つ息をしてから呼び鈴を押した。
何度そうしてもドキドキするのは、目の前の扉が開いたらとびきり格好良い恋人が優しく名前を呼んでくれるから。
まるで何度も恋をしてるみたいだ、なんて本の読み過ぎだ。
「はよ、遥登」
「おはようございます」
優しい声が名前を呼ぶ。
やわらかく目を細め、愛おしそうに大切そうに愛情を隠す事のない恋人。
さらっとシャツを着ただけだが、爽やかで格好良い。
量販品店の安い服でも上等な物に見えるし、何よりシンプルだからこそ顔の端正さが引き立つ。
頭を下げて玄関に入ると長岡のにおいが全身を包んだ。
それが嬉しい。
靴を脱ぐのもソコソコにアイスが溶けてしまっては大変だとコンビニ袋を手渡す。
「これ、お持たせです」
「俺に金を使うなって何回言ったら覚えんだ。
優等生」
「でも、泊めてもらいますし。
それに、俺もいただきますから」
長岡は三条が学生な事を気にするが、だからと言って一方にばかりに甘えるのは違うと思う。
学生社会人関係なく、恋人同士は対等な筈だ。
そうでありたい。
靴を端に並べた三条が何時ものにこにことした安心しきった顔を見せると、長岡は解ってるとでも言いたげに頭を撫でた。
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