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第176話

スポーツ番組がはじまると、それまで腹の上でスマホを弄っていた三条がぱっと顔を上げる。 そして、 「正宗さん、誕生日おめでとうございます」 「ん、ありがとう」 とびきりの笑顔に祝福され、28歳の年がはじまった。 三条は身体を起こし、背筋を伸ばしてからもう1度祝福の言葉を贈る。 誕生日なんて、と思っていたのは随分前の様に感じるがたった3年程前の事だ。 遥登と出会ってからそれは変わった。 家族を大切にする姿勢に触発され、物事を柔軟に考える様になれた。 特別な日になった。 長岡も起き上がると三条にきちんと向き合う。 「遥登と迎えられて嬉しいよ。 泊まってくれてありがとな」 三条が手を掴むとやわらかなものが口の端に触れる。 同じシャンプーのにおいとさらさらの髪が目の前に広がって、子供体温が背中へ回った。 「俺が1番に言いたかったんです」 「んだそれ。 すげぇ嬉しいだろ」 「嬉しいですか?」 「さいっこう」 細い身体を抱き締め返す。 心配になる程ガリガリで子供体温で、清潔な良いにおいがする。 遥登を形容するすべてが大切だ。 愛おしい。 「俺も嬉しいです」 ありがとう 沢山、ありがとう

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