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第175話

ソファに寝転がって本を読んでいると隣に三条がやって来た。 床に座りどこか嬉しそうに文庫本を読みはじめる。 遥登のこういうところが好きだ。 本を腹に置くと空いた手でその髪を撫でた。 「腹がさみぃな」 その言葉の意味が解る三条はふわっと微笑む。 三条が笑うと世界が明るく見える。 色も温度も、すべてが表情を変え綺麗だ。 儚く散る桜も、雨に濡れる紫陽花も、風と踊る落ち葉も、色を奪う雪も、美しい。 朝顔の咲く朝も、茹だる程に気温の上がった昼も、すべてが暗闇に飲まれる夜も、愛おしい。 キシとソファが軋み2人分の体重を支える。 重くないですか?なんて愚問だ。 こんなガリガリ何を言うか。 本を床に置き、腕を引いて抱き締めると恥ずかしそうにだけど嬉しそうに照れた。 さらさらと指の間から溢れる髪から同じシャンプーのにおいがする。 同じ筈なのに、この子から香るともっと良いにおいがする。 俺もこのにおいにくるまりたい。 どんなにしあわせだろう。

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