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第174話

「滲みねぇか」 「大丈夫ですよ」 長岡は皮の剥けた傷に消毒液を吹き掛ける。 真っ赤に腫れた歯型は独占欲で済むものじゃない。 やり過ぎたと反省する長岡とは反対に、三条はにこにこと何時もの笑みをたたえていた。 寝た事で体力は大分マシになったし、傷だってすぐに治る。 「悪かったな。 風呂痛かっただろ」 「あの…なら、と言うのも違うんですけど、もう1日泊まっても構いませんか…?」 綺麗な目を大きくした長岡に駄目押しのキスをする。 「ご迷惑なら帰ります。 でも、今日も正宗さんと一緒に寝たいです」 「良いに決まってんだろ」 昨日も泊まったから気にしてくれているのは解る。 卒業した今でも生徒の時と変わらず家の事も心配してくれる。 嬉しいけど、俺だって傍に居たい。 一緒に飯を食べて本を読んで寝て、おはようと言いたい。 我が儘なのは解っているけど、俺だって正宗さんが好きだから。 「昨日も泊まってくれたのに良いのかよ。 あ、だからアイスも飲み物も多かったのか?」 「へへっ」 「すげぇ嬉しい」 頬を撫でる冷たい手が気持ち良い。 その手に同じものを重ね、すり…と頬ずりすると、長岡の目がやわらかくなった。 愛おしいものを見る優しい目。 そこに写る三条もまた同じ目をしていた。 「泊まってくれ」 「もう1泊、お世話になります」 「ん、お世話します」

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