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第183話
確認テストの最中、首の後ろに痛みを感じた。
痛いと言うより汗が滲みる。
覚えはないが遥登の爪が引っ掛かって、傷でも出来たのだろう。
必死にしがみ付く恋人は可愛かった。
そんな子から与えられた物なら傷さえ愛おしい。
なんて、本気で思う。
「先生、消しゴム落としました」
「はい。
今、行きます」
手を上げ自分を呼ぶ声に使っていたボールペンを胸に差す。
床に転がった消しゴムをどうぞと渡すと頭を下げてくれた。
長岡も下げ返すと、ついでにぐるりと机の間を塗って歩く。
新しい高校の制服。
におい。
校舎。
教室内に吹き込む風さえ違って思える。
そっと首の後ろに触れると、やっぱりピリッと痛みが走った。
温い風が入ってきては生徒の髪を揺らす。
そこにあの生徒は居ない。
あの生徒は、恋人は部屋で自分の帰りを待っていてくれている。
早く帰りてぇな
あの笑顔がもう恋しい。
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