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第199話
デートの最中、長岡は薬局に消毒液を買いに行った。
三条は大人しく恋人が戻ってくるのを待っている。
手持ち無沙汰になり車内から空を覗く。
出入り口から離れた場所といっても看板のネオンや駐車場を照らす外灯が眩しくて、星が見えない。
今日は星が見えそうなのに。
もう少し上を覗こうとすると、被っているキャップのツバが窓ガラスにぶつかった。
すると、何してんだ?と不思議そうな顔をする長岡と目が合い再びシートに沈む。
「待たせな。
ほら、消毒液」
「ありがとうございます。
でも、本当に大丈夫ですよ…」
長岡に噛まれた乳首は当初確かに若干血が滲んだが、もう瘡蓋になって乾いている。
それより、シャツに擦れて気になってしまう乳首を少しでも刺激から守る為に貼った傷絆創膏の粘着面でかぶれてしまった箇所の方が赤くなってしまった。
言わないけど。
ビニール袋の中からペットボトルと1本と何か小さな小袋を取り出すと残りを三条へと手渡した。
「ま、何かあったら使ってくれ。
それと、飲み物飲みな」
「ありがとうございます」
ん、と短い返事をするとカサカサと何かし始めた。
覗こうとするより早く綺麗な顔が自分を見る。
「…遥登、口開けて」
「口、ですか?」
「あー、って」
あ、と口を開けるとポイっと口の中に何かが入ってきた。
甘い知った味に口を閉じる。
もぐもぐと弾力のあるそれを咀嚼してわかった。
「グミ…?
コーラ味ですね。
でも、なんか少し酸っぱい…?」
「最近食ってんだ。
遥登にもと思ってな」
「ありがとうございます。
でも、正宗さんがグミってなんか意外ですね」
長岡ももぐもぐと同じものを食べている。
こういった類いのお菓子を食べてるのは殆んど見た事がなかった。
食べるんだ…
食べるか
正宗さんだって子供の時好きだったかも知れないし
珍しいなとまじまじ観察していると優しく頬を撫でられた。
肉付きの悪い頬をすりっと撫でられ、意識がそちらにいく。
「駐車場だからお預け」
色っぽく細められる目と、甘さを含む声。
溶けてしまいそうな雰囲気に流されそうになりハッとした。
此処、駐車場だった…っ
「その代わりこのグミやるよ。
あーん」
少し酸っぱい様な味のするグミを噛み締めながら長岡はエンジンをかけた。
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