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第210話
ローテーブルの飲み物に手を伸ばすともう少ししか入ってなかった。
飲みきると、空に気が付いた長岡は三条の手からマグを取り冷蔵庫へと歩く。
「同じので良いか?」
「あ、すみません」
「俺も飲みてぇから良いって。
座ってろ」
やっぱり格好良いと背中を見送る。
高校時代も思ったが、長岡は人をよく見ている。
一見興味無さそうでも生徒の変化に気付き声をかけていた。
洞察力なのか、観察力なのか、今になって優れた視点に見守られていたと知る。
やっぱり憧れであり目標だ。
視線の先をいく脚、その細い足首を惜しみもなく出している。
完璧な人の無防備な1面はグッとくると言うが、それに性別は関係ない。
きゅっと引き締まった足首の細さと、そこから伸びる脚の長さが羨ましい。
そんな本人は何処吹く風。
コーヒーのはいったポットを片付け腕で欠伸を隠しながら戻ってきた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。
次のおかわりは俺が持ってきますね」
「ん、頼むな」
恋人はどうぞとおかわりを手渡すとコーヒーに口を付けながら隣に腰をおろした。
「遥登、あーん」
「あ、」
またグミだ。
むちむちと噛み締めながら長岡を見るとやっぱり同じものを噛んでいる。
「ん?
どうした。
もう1ついるか?」
「え、あ」
まだ口の中にあるのに更に押し込まれた。
少し酸っぱいのを除けばよくあるコーラ味で美味しい。
この酸味が気に入ったのだろうか。
じっと見詰めていると、綺麗な笑みが返ってきた。
ま、良いか
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