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第211話

午後になりフェーン現象で気温がぐんぐん上がってきた。 しかも腹筋なんてしたから殊更だ。 風も強く窓を開ける事も出来ず、扇風機を回した。 若干温いが、それでも風のお陰で涼しく感じる。 台風が直撃しなかっただけ有り難い。 三条はこの部屋にすっかり慣れ、よく窓の外をぽけっと眺めたりうとうとしたりしてくれる様になった。 脚は崩さないし誘わなければダラけたりはしないが、それでも大きな進歩だ。 「遥登、暑くねぇか」 「大丈夫ですよ」 そよそよと髪を揺らしながら何時もの顔で頷いた。 だけど、誘ってみるか。 「かりかりくん食おうぜ」 「はいっ」 今度はすごく良い顔で頷いた。 こういう所が好きだと改めて思う。 大人びた考えをするが子供の様に真っ直ぐで、豊かな感受性も表情も汚れがない。 一緒にいて楽しくて、世界が鮮やかになる。 自然と笑顔になれるのは恋人のお陰だ。 冷凍庫を開けると急いでやってくる恋人はとても可愛い。 「どれ食う?」 「ソーダ味が良いです」 「ん、どうぞ」 長岡はコーラ味を手にするとパタンとドアを閉めた。 破いたビニールをさんの手から取ると自分の分のそれと共にゴミ袋に入れる。 長岡が口を付けないとアイスも待つ三条の為にすぐに齧り付いた。 「冷たくて美味しいですね」 「あぁ、美味いな」 一緒に食うから美味い。 そんな事すらこの子から教えて貰った。 「遥登、1口交換しようか」 「はいっ」

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