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第282話

日もとっぷりと暮れた頃、インターホンが鳴り響いた。 風呂から上がって、ダラけながらコーヒーを飲んでいた長岡はそれが誰が知っている。 インターホンで確認する事もせず玄関ドアを開けた。 「よ、お疲れ様」 「こんばんは。 正宗さん」 口端がきゅっと上がった三条だ。 漸くバイトが終わった三条はそのまま長岡の部屋を尋ねた。 今日はライブ関係のバイトだったらしく、時間が遅い。 日が沈み気温も下がったせいか掴んだ手も冷えている。 「寒かったろ。 先に風呂にするか? それとも飯?」 「正宗さんは腹減ってませんか?」 「コーヒー飲んでたし大丈夫」 「じゃあ、あの…少しだけ」 そう言って指を握ってきた可愛い恋人ににやけてしまう。 「少しだけ? 沢山だろ」 漸く会えた恋人にデレデレだ。 目蓋にちゅ、とキスをした。 それと同時に清潔なにおいがする。 遥登のにおいだ。 「正宗さんはいいにおいがします。 洗濯中ですか?」 「ん、洗うのあれば洗ってやるから出しな」 「ありがとうございます。 文化祭はどうでしたか?」 「んー…、食いもん系が沢山あった。 チョコバナナとか」 「チョコバナナ…!」 美味しそうと微笑む恋人のお陰で、さっきまでの部屋の冷たさはなくなった。 とてもあたたかい。

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