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第283話
くしゅんっと三条がくしゃみをすると長岡は顔を覗き込んだ。
話を聴くと、今日のバイトは物販列の整備誘導だったらしい。
販売開始1時間以上前から並び始めた列は時間を追うごとに長くなり、列が外へと伸びるとそこからは長い時間外にいたらしい。
なら、風呂であたたまってこいと送り出したのは、ついさっきの事。
「遥登、タオルと服置いとくからしっかりあったまってこい」
「お手数おかけします…」
洗濯のついでだ、と伝えるとそれでもありがとうございますと浴室から返ってきた。
礼儀を忘れないのは三条らしい。
洗濯の終わった衣類を洗濯機から取り出し、バサバサと振りながらハンガーに引っ掛けていく。
浴室からはシャワーの水音。
こういう日常がとても愛おしいと思うのは、それが1人では出来ない日常だからだ。
そして、その相手が三条だから。
「マジであったまってこいよ。
風邪ひかせたら親御さんに申し訳ねぇからな」
コンッとドアを叩き、浴室に向かって駄目押しとばかりに釘を指すとはいと返事が聴こえた。
「良いお返事です。
あと、悪りぃんだけど風呂出たら洗濯物を浴室に干して浴室乾燥してくれるか」
「わかりました」
「頼んだな」
遥登が風呂の間に飯でも作っとくか
何食うかな
やっと色鮮やかになった部屋へと戻る足さえ軽かった。
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