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第297話

微かに聴こえる鼻歌に覚醒した。 遥登…? 二度寝をかました昼寝から目を覚ますと丸い頭部が携帯を眺めていた。 何を見ているのかやわらかな視線に嬉しそうに口端が上がっている。 愛おしい横顔だ。 ふと、しあわせだなと思う。 ありふれた景色の中に三条がいるだけでこの世界は色鮮やかになりあたたかくなる。 こういう事をしあわせと言うのだろう。 此方に気付く事なくご機嫌な恋人へと腕を伸ばし抱きとめる。 「っ!?」 くりくりした綺麗な目が自分をとらえた。 「はよ」 「びっくりした…。 おはようございます」 目を大きく見開いた三条だが、長岡の目を見てすぐにふにゃーっと何時もの顔に戻った。 「起こせって」 「寝顔を堪能してたんです。 写真撮っちゃいました」 「んじゃ、撮影代」 チュ その顔にキスをすると目尻を微かに赤にする恋人は口元を手で隠した。 そんな事をしているが、三条だって長岡とのキスが大好きだ。 ただ、恥ずかしい方が勝つだけ。 「したいだけじゃないですか…」 「まぁな」 三条のスマホのフォルダにも沢山の長岡が納められているのは本人だけの秘密。

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