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第296話

寝顔を写真に収め、動画を撮る。 スースーと気持ち良さそうな寝息は録音されているだろうか。 指で頬を撫でると上がる口端もつぶさに撮していく。 フォルダに貯まった恋人の──恋人との写真と動画。 笑ったものからいやらしいものまで沢山ある。 どれを見返しても自然と口元が緩んでしまうが、三条を脅していたものは少し思う事があった。 といっても、当初の初々しい反応、幼い顔、声、嫌がり方も興奮するが。 死んでも直らないであろう癖だ。 それを受け入れてくれた三条。 この子には沢山の愛情と感謝がある。 ドロドロした思いを拭いきっても残るそれらは、何時しか自分の生き方を変えてくれた。 それは、この子自身の真っ直ぐな生き方に似ていてほんの少し擽ったい。 バイトをして勉強をして弟と過ごし、疲れた顔もせず自分の所へ来てくれる。 自分よりずっと男気があって格好良い恋人だ。 伸びた前髪を退かし丸い額にもう1度唇をくっ付け、あたたかな子供体温を抱いて目を閉じた。

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