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第324話
さみぃ…
長岡はそんな思いは微塵も顔に出さず、足早に準備室を目指す。
コートにマフラーと防寒していても寒いものは寒い。
雪が降っていないだけ有り難いが、それは変わらない。
擦れ違う生徒に挨拶を返すと、女子生徒達は嬉しそうな顔をした。
この顔の何が良いんだか、と毒づきながらもそれを隠す教師の仮面。
恋人に格好良いと言って貰えればそれで十分だ。
それに、A組達も頑張っているのだから負けていられない。
気を引き閉め直し、階段を歩く。
ヒラヒラとスカートを翻す生徒の若さが羨ましい。
男子生徒はコートも着ず首元を緩め、若さを全面に押し出している。
若けぇ
遥登もマフラーだけで過ごしてたけど、今はちゃんと上着着てんだろうな
白い息を吐きながらにこにこと挨拶をしてくれた三条。
寒そうにジャケットのポケットに両手を入れ、田上と吉田と楽しそうに話をしていた。
懐かしいに変わった、たった1年前の姿が思い浮かぶ。
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