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第330話

バイトばかりで長岡に会う時間が短くなったが、今なら短期のバイトが沢山ある。 住職でさえ走るから師走なんだ。 我が儘は言ってられないし、どうせ会えないのなら忙しい位が良い。 正月も一緒に過ごしたいし頑張ろ 目先の目標があるから頑張れる。 それも、恋人絡みなら尚更だ。 三条にとって長岡は目標。 教師としても、人としても。 その為に色んな事を経験してみたい。 「三条くーん、これ重くて…手伝って…」 「はいっ」 年配の女性に呼ばれた三条はメモ帳とボールペンをポケットに押し込むと、駆け寄った。 パートが重いと言った荷物をひょいと持ち上げると荷台に乗せる。 貧相な腕でも腕力は男だ。 これ位なら持ち上げられる。 「流石、男の子ね」 「これ位任せてください」 「でも、細過ぎよ。 もっと食べなきゃ」 「食べてますよ。 付きにくい体質なんです」 「そうなの? 羨ましいわね」 他愛もない話をしつつ手を動かし足も動かし恋人との逢瀬に備える。 正宗さんに甘えてばっかりはやっぱり嫌だしな 対等でいてくれるんだから、対等でいたい 年齢や立場は関係ない。 恋人とはそうなのだと教えてくれたのは恋人本人だ。 「三条くん、これもお願い出来るかな」 「はい。 今、行きます」 キュッとスニーカーの底を鳴らし次の仕事に取り掛かる。

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