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第425話
綾登専用の椅子が用意され食卓は更に賑やかになった。
「んー、んーっ」
「綾登うどん好きだね。
美味しい?」
口から溢れ落ちそうなのを小さな手で摘まむと、これ!と見せ付けてくる。
そっくりの顔で微笑む母が頷くと綾登は上手に口に運んだ。
「上手に食べられたね。
すごい」
大きくなった兄達にとれば当たり前の事。
だけど、小さくて大きな進歩を母は誉め弟は喜ぶ。
そんな沢山の喜びに満ちる毎日に気が付かされた。
「綾登は賢いもんな」
「綾登、みーちゃんのご飯美味しいな」
兄達も箸を止め、弟を構う。
嬉しそうな顔はより深くなりもう一口食べたいと手を伸ばした。
母が小さく切ったそれを口に運べばまた上手に食べ、誉められるのを待ついじらしい姿に頬が緩んでしまう。
「綾登、沢山食べてすごいな。
大きくなれるぞ」
「俺の次にな」
「うー、あっ!」
「綾登、もう一口あーんしようか」
「んーっ」
父はひたすらににこにこと見ていた。
しあわせを噛み締める父の顔を見ていると恋人に会いたくなってくる。
長岡に会いたくなる。
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