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第590話
背中にぶつかるあたたかな物体。
一体今までどこにいたんだ。
「蓬、ただいま」
にゃーっと端びた声に口角が緩んでしまう。
こっちも変わりなさそうだ。
ゴロゴロと喉を鳴らしながら脚に頭を擦り付けてくるとは今日も可愛い。
自分のにおいを付けなくともお目当ての物はやる。
あぁ、でも、あの子とはまた違ったこの求愛の仕方も可愛い。
脇に置いたビニール袋からお目当ての物を取り出すと、柏も伸びをして動き始めた。
まだ、何も言っていないのに。
遥登みてぇ
大好きな食べ物を目の前にしキラキラと目を輝かせる恋人の様に、柏も蓬もどこか嬉しそうな顔をして足元にやってきた。
さらに蓬は膝の上に乗り早く頂戴と催促までしてくる。
あの子もこうして甘えてくれればもっともっとでろでろに甘やかすのにな。
「きゅーるな。
沢山食べるとデブるから気を付けろよ」
封を切る瞬間も待てないと背伸びする2匹を制しながら、個包装を2つ取り出す。
端切れのゴミをビニールに隠しながら、まずは先住猫の前に差し出した。
「柏も食え。
好きだろ」
ペロッと舐めたと思えば、 横からが蓬舌を伸ばす。
いつも並んでご飯を食べている2匹だが、きゅ ーるに感じては蓬の熱が違う。
そんなに美味いのかと思う位食い付きが良い。
なんかやばいもんでも入ってるんじゃないかと思う程だ。
食べても身に付かない三条とは違い、食べた分だけ丸くなる柏と蓬。
それはそれでとても可愛いのだが肥り過ぎると身体に良くない。
後でしこたま遊んで身体を動かしてやらないと。
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