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第680話
嬉しそうな顔で3本目をカシュッと開栓する村上に、溜め息の代わりに牛乳を飲み込んだ。
『酒は1口目が美味いよな』
「開けたら1口目のカウントかよ…。
それ言って大丈夫なの大学生までだろ、社会人」
ストロング缶じゃないだけマシか。
でも、本当に風呂場で倒れてるのだけは勘弁だ。
口酸っぱく忠告しておかなければ。
関川は眉を八の字にしながら甘いそれを飲んでいる。
普段温厚な奴ほど怒ると怖いからな。
『そういや。
長岡、煙草辞めたんだよな?』
「あぁ、辞めた」
『俺のぷりっぷりの肺よりボロボロなんだから気を付けろよ』
言い方はあれだが言ってる事はとても有り難い。
遠慮のない関係だからこそ改めて心配したりされたりはなんだか照れ臭い。
それを隠しての言い方なのだろう。
「俺は育ちが良いから手洗いうがいはしっかりしてんだよ。
洗濯も頻繁にしてるしな」
『ほんと仲良いね』
『長岡友達少ねぇんだら俺の事、大切にしろよ』
「友達…?
俺と村上が…?」
『マジトーンやめろや』
『ははっ、もう酔ってるね。
セーブしてね。
吐いても知らないよ』
元々、イライラした時にしか吸わなかった。
それに加え、校内全面禁煙の徹底や喫煙場所の縮小、生徒や保護者の目も気になり自宅でのみの喫煙。
そのお陰か本数自体は少なく済んでいた。
辞めたきっかけは、三条ににおいが移ると怪しまれる事と少しでも長く三条の隣に居たいから。
だからこそ、きっぱりと辞める事が出来た。
これに関してだけは、時代に感謝している。
今となれば電子煙草も興味はない。
それより、三条とのキスの方がずっと良い。
なんて、友人には言わないが。
『そんな飲んでねぇから大丈夫だって。
それより、関川聞いたか。
俺ら友達じゃねぇって、寂しいな』
『えー、俺は正宗くんの友達だし』
「おい、酔っぱらい。
俺の友達に絡むな」
『おいっ!2人とも…きもちわるい……かも……』
「だから飲み過ぎんなって言ってんだろ。
吐くならトイレ行け」
『目の前で吐くとパソコンやばいよ』
『うぇ……とい、れ…』
もう辞めさせるタイミングだ。
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