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第1328話
冷たい廊下を抜けリビングへと戻ると髪がとても冷たい事に気が付いた。
滴る滴も冷たい。
「ちょっと待っててくれ」
『はい』
だが、カメラを机に置いた長岡はそのまま炊事場へと向かっていった。
そこで湯を沸かす準備をし、また脱衣場へと戻る。
簡単に髪を乾かし帰ってくると湯は沸いていた。
適当に取ったカップ麺の蓋を開けカヤクや調味料を取り出す。
早く戻りたい気持ちを押さえつつ、カヤクとお湯を入れた。
ついでに冷蔵庫から飲み掛けのペットボトルを手にして漸く腰を下ろせる。
「ただいま」
『おかえりなさい』
やっぱり此処が落ち着くと定位置に腰を下ろす。
『あ、美味しそうですね』
「美味そうだろ。
遥登は晩飯なに食ったんだ?」
『蕪のそぼろあんかけです』
「あー、美味いやつ」
カップ麺で手を暖めながら、5分を待つ。
1人の時とは比べようがないほどかけがえない時間。
気軽に会えなくなり、よりそう思うようになった。
同じ5分でも価値がグッと上がる。
ただ一緒の時間を過ごすだけなのに。
ペットボトルから直接─だけど直接口を付けずに─飲み物を飲むと三条の顔が緩んだ。
「ん?」
『正宗さん、本当にその飲み方上手いですよね』
「遥登も出来んだろ」
『2リットリのはちょっと緊張します。
思ってる以上に流れ込んでくる時あるじゃないですか』
「喉の奥拓くの得意じゃねぇかよ」
『え、』
「さて、食うかな。
いただきます」
パンと手を合わせてから、ラーメンの蓋を外した。
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