繋がったままの画面には、頭の天辺だけを残しあとは毛布に潜り込んだ三条が写っていた。 いつもの寝姿が、やっぱり好きだ。 髪を後ろへと撫で付けつつ、その姿を頭に焼き付ける。 「はよ」 起こしてしまわないように小さな声で挨拶をし、ベッドを抜け出た。 冷たい床はむしろ痛い程だが、身支度を整えなければ。 今日も仕事だ。 一層冷える洗面台で歯ブラシを銜えて、もう１本をじっと見詰めた。 それは三条が使っていた物だ。 ほぼ毎週この部屋を訪れる恋人が外泊日以外にも飲食をした後に歯を磨けるように用意したもの。 もう使えないとは頭で理解していても、捨ててしまえばあの日々が“過去”になってしまうようで嫌だった。 だが、そろそろ本格的にヤバそうだ。 なんとかする決心を付けなければ。 洗顔や歯磨きを済ませ、戻ってきた寝室で今度はスーツに着替える。 ふとんが恋しい思いを振り払うように、そちらに背を向け着ていたスウェットをベッドに放った。 隣の部屋から聞こえてくるアナウンサーの声が、今日は一層冷えると言っている。 保温交換のある下着にセーターも着込もう。 暑ければ脱げば良いが、寒くても着られる物がなければ意味はない。 予備のセーターなんてものは置いていないので着込むべきだ。 その時、背後から寝惚けた声が聴こえてきた。 『まさむねさん…』 「お、起きたか」 『はい……、おはよ、ございます』 珍しく眠そうな声に、全身の力が半分になる。 それでもカメラに近付き挨拶をする。 されたら返す。 人間として当たり前のことだ。 「はよ。 眠そうだな」 『ふとん、きもちよくて…。 でも、起きます』 「まだ寝てれば良いだろ」 『見送ります……』 「見送ってくれんの？」 こくんと動く頭にまた笑みが溢れる。 「嬉し」