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第1501話

「はーると。 マフラー、俺にさせてくれるか」 手に取ったマフラーを奪うと、くるくると巻いていく。 「ん。 やっぱ、何度見ても似合ってる」 「ありがとうございます。 すごくあったかいです。 それに、俺も何度見ても嬉しくて」 プレゼントのマフラーに触れながら微笑む顔に、満足感が溢れてくる。 こんなしあわせな気持ちにさせてくれて、ありがとう。 様々なもので磨り減っていく心がいつもの穏やかなものへと変わっていく。 この子は、命の泉だ。 この子の隣にいると息が出来る。 以前は意識した事すらなかったのに。 マスクをしっかりとし、外を出歩く時の格好に少しだけ引き留めたい欲が芽を出す。 何かに塗れる前に、独占欲を塗り付けたい。 「2年の遥登に会えんのも今日で最後かもだし、抱きさせてくれ」 「3年になっても、これと言って変わりませんよ」 「んー、もう2度と抱けねぇんだぞ。 心ゆくまで堪能しとかねぇと、勿体ねぇ」 三条は抱くと言う単語に反応し、僅かに肩を跳ねさせたが回す腕の力は緩めない。 リュックを手に取れないように抱き締め、その体温やにおいを思いっきり楽しんだ。 正直な話、これだけでは足りない。 だが、三条の事で満足する事はなに1つない。 貪欲に求めてしまう。 もっとを欲してしまう。 笑ってくれ。 遥登の笑った顔が大好きだ。 なによりも愛おしい。 最愛の遥登、少し早いが進級おめでとう。 教育実習がはじまり怒涛の日々になるだろうが、早く背中に触れてくれ。 ここで、待ってるから。

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