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第2話 所有の証は ※
聞こえてきた冷たい声音に萎縮してしまう。
賢司をこんなにも怖く感じる日が来るなんて思ってもいなかった。一体俺は何を間違えてしまったんだろうか。
ただただ見上げることしかできない俺を見て、賢司が冷ややかに笑う。そして、俺の服を乱暴に剥ぎ取り、ベルトに手をかける。
「嫌だ!やめ、やめろ、冗談だよなっ?!」
「冗談でこんなことしない、だろ?」
あっという間にベルトは抜き去られ、抵抗もままならないまま、ズボンも膝の辺りまで脱がされてしまう。
「…っ、お前も、αなんだぞ、っ、こんなことしたら、」
「なんだ、俺が"そういう対象"だってこと、覚えてたのか。あんまりにも警戒心がないから忘れたのかと思ってた」
「忘れるわけ、っ」
ぐい、と引っ張られ、気がついたら賢司の顔が目の前にあった。それだけじゃなく、唇に生暖かい感触を感じた。突然のことに体が硬直し、キスをされている、と気付くまで数秒かかってしまった。
「や、ぁ…う…っ、…ん、んん」
賢司の舌が口内を暴れまわり、くちゅり、という生々しい音が聞こえてきて、顔から火を吹きそうなほど恥ずかしくなった。
歯列を丁寧になぞられ舌を甘噛みされると、ゾクッとした甘い痺れが体に広がる。
キツく抱きしめられ、与えられる快楽にくらくらする。抵抗しなきゃいけないのに、できない。
さらに、ぐり、と膝で昂りを圧迫され、苦しいはずなのにわずかに快楽も拾ってしまう。そんな暴力的な快感で、次第に視界が滲んでくる。熱に浮かされそうになる。
「なん、なんで、こんなこと…っ、うあっ?!」
「濡れてるな…」
抱きしめられながら、固く閉ざされている蕾に指が浅く入れられる。そこは確かに濡れ始めていて、賢司の指をすんなりと迎え入れた。
「はは、一本入れるくらいなら余裕だな。発情期の時、ここ、いじったりするのか?」
「そんなこと…っ」
「しないのか?」
賢司の吐息が熱い。目にも情欲の炎がちらちらと見えている気がして、やけにドキドキする。
おかしい。賢司をそういう対象で見たことなんてなかったのに。ずっと友だちだと思ってた。αなら誰でもいいわけじゃないのに、こんなのおかしいのに、Ωという性に翻弄されている気がして嫌だ。心と体の反応は真逆で、苦しい。
…ああ、ちがう、欲しい。
もっと絶対的な質量で埋めてほしい。
訳がわからなくなるくらい、ぐちゃぐちゃに乱して、暴いてほしい。
そんな浅ましい気持ちが頭の中を占めていく。
「あ、ぁ…っ、けんじ、おれ、や…、ともだち、なのに、ほしい…、っだめだ、こんなの、ちが…っ」
「違わないよ。変なことじゃない。もっと俺を欲しがれよ、晴翔」
「や、やだぁ…っ、だめ、だから…!」
「可愛いな…」
賢司はまた俺の唇に深いキスを落としながら、蕾を刺激する指を二本、三本、と増やしていく。浅いところで抜き差しを繰り返され、もどかしさとゾクゾクとした愉悦で体が震えた。
「あ、ぁあ…」
「これ、くらいで、いいか…」
やっと解放され、床にぺたりと胸をつける形になる。ひんやりとした床は、火照った体には冷たすぎる気がした。
「まだバテるのは早い、からな」
「んあ、っ、あぁ!うあっ!はい、入って…くる…!」
「ん…っ、晴翔の中、熱いな」
腰を持ち上げられ、勢いよく賢司の硬い高ぶりが突き入れられた。その衝撃で、ぽたぽた、と精液が床に飛び散った。
「入れただけでイったのか?」
「う、うぅ…っ」
恥ずかしい。消えてしまいたい。
まさか親友に入れられただけでイくなんて。
呆けている俺のことなどお構い無しに、賢司が規則的な音を立てながら律動を始めた。
そして、何かを探るように大きくかき回され、ある一点を突かれたとき、ビクリと体がしなった。
「ひぁっ?!そこ、や、やだぁ…っ!」
「んっ、締まる…、はは、ここか?気持ちいい?」
「ぁああっ!きもちい…っ!だめ、だめだ、イくの止まらなくなる、からぁ…っ!!」
「たくさんイっていいよ、晴翔」
「っ、あ、あぁっ、んぐっ、ひぁっ!」
はしたない、言葉にならない声を上げながら賢司の突き上げに酔いしれる。何度も何度も絶頂が訪れて、その度に白濁を吐き続ける。
何度目か分からない吐精のあと、背中に口付けられ、ビリっとした痛みを感じて少しだけ我にかえった。そうだ、今は発情期を無理矢理引き出されてる状態だ。このままうなじを噛まれたら、番になってしまう。
咄嗟にうなじを両手で覆い隠すように押さえたものの、賢司はそんなことなんて構わず、容赦のない痛みで指に噛みついてくる。
このままじゃ本当に。
消えそうな理性を総動員して、涙をこぼしながら賢司を見つめる。
「や…、やだぁ、やめ、やめて、けんじ、おねが、…っ」
「……俺と番になるのは、泣くほど嫌か」
その声が辛そうで、一瞬だけ手が緩む。
その隙を見逃さなかった賢司は、俺の両手をひとまとめにすると、床に押さえつけた。逃げようとしてもびくともしない。そして、
「っ?!うぁ、あぁあっ!」
瞬間、身体中を電気が通ったかのような衝撃に襲われた。うなじが焼けるように熱い。何が起こったか分からなくて、その熱さと痛みにぼろぼろと涙がこぼれる。
そのまま奥を数度突き上げられて、薄くなった精液を吐き出す。
目の前にチカチカと星が散っている。
枯れてしまうんじゃないかというほど、涙があとからあとから溢れてきた。
賢司の顔は、ぼやけてよく見えなくて…
俺は、そのまま意識を沈めることになった。
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