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でも結局、本人たちが幸せならそれでいいんじゃん、てなる。 他人の俺が口を出すことでもないし。 だから、つまり。 そういうDomとSubを見て、変だと思う俺は、Normalなはずなんだ。 Subじゃない。 だって俺がもしSubなら、DomとSubを見て、変だとは思わないだろう。たぶん。 本郷はいつから、自分がDomだと気付いたんだろう。教科書には、遺伝性ではなく、思春期頃に自覚するものだと書いてあったけど。 本郷と同じクラスになったのは、高2の春。 俺が1年の時から仲良かった加古と、本郷が同中(おなちゅう)だってことで、自然につるむようになった。 誘われて2人で出かけたりするようになったのは、夏休み明けからだ。 たぶんあの頃から、俺をSubだと勘違いしていたんだろう。 身近にSubを見つけたって思い込んで、Normalな俺を自分のパートナーだとか思っちゃったのかもしれない。 それだったら早く、あいつに教えてやった方がいいのかな。 俺はSubじゃないって。 そしたらあいつ、もう俺に興味なくすのかなぁ。 しつこいくらいに誘ってくるエッチも、変なプレイも、もう全部なしで。 ちゃんと懐いて可愛いSubを見つけて、乗り換えるのかな。 俺のこと、自分のSubだと思ってるから、かまってくるんだろうな…… 好きだから、とかじゃ、ないんだよな…… 「おやすみ、俺のSub」 その声が、耳の奥に残ってる。 違うんだよ、本郷。 俺はSubじゃない。 なんで勘違いさせたのかはわかんないけど、俺は、おまえのパートナーにはなれないし、…… なりたいとも、思わない。 だって、首輪つけられて、誰かに支配される人生なんか…… いやだ。 本郷は俺に、そういうのを求めてんのかな。 そのうち、だんだんエスカレートして、俺を足元にひざまずかせようとしたり、すんのかな…… 俺はそんなのには、応えられないのに。 全部、勘違いだったんだ。 あぁなんか…… ただのエロ目的だって思っていられた時の方が、よかったな…… 俺はなんだか悲しくなって、保体の教科書の上に頭を下ろした。 窓の方を見ると、本郷に持たされたゴーヤ茶の向こうに、黄色い三日月が浮かんでいた。

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