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額をシーツに埋めたまま、潤んだ目を細めた海老沢が首をひねってオレを見上げた。 「…… ちゃんと、欲しい?」 そう訊くと、海老沢が少し顎をひく。 うなずいたんだと思う。よくできました、そう言ってやりたいけど。 まだ、足りない。 「じゃあ、言えよ。」 つぽん、と、亀頭を埋めてやる。もう少し進めれば、イイとこに触れる、ギリギリのところ。それを咥え込んだ入り口のひだが、くびれを包むようにきゅっとすぼんだ。 「意地はってないで、そろそろ言えって。」 海老沢が、への字に曲げた口をぎゅっと結ぶ。 それを見て、少し引いた腰を、一気に奥まで突き出した。 「う゛あっ!」 掠れた悲鳴があがる。 自分の息まできれるほど、何度も引いては突き、虐めるように奥ばかりを攻めた。 肌がぶつかる音と、海老沢の啼き声が部屋に響く。 「ほら、言えよっ、早く…… っ」 「いあっ!あっ、あ、あ…… っ、やぁ…… っ!」 早く、言え。 そしたら優しくしてやるから。 つらそうな顔に興奮する。でも、シーツに染み込んだ涙に罪悪感も覚える。 虐めたい。優しくしたい。オレにすがりついて泣く顔を見たい。べたべたに甘やかして蕩かしてやりたい。 それは全部、同時にオレの中にある。 イかせて。 たった一言、そうお願いすれば、バンドを外して優しく抱いてやると言ったのに。 かたく閉じたまぶたの間から涙を流しながら、海老沢は開きっぱなしの口で枯れた喘ぎを漏らすだけで、頑なにその一言を拒んだ。 つらそうだ。本気でつらそうだ。 不安がよぎる。 大丈夫なのか…… これ。 海老沢はちゃんと、オレについてきてるのか? 大丈夫だよな。だって今日も、始める前にちゃんとセーフワードは確認したんだから。 本気で無理だと思ったらすぐに言えって、言ってあるんだから…… オレは腰の動きを止めて、身体を倒して海老沢のうなじにキスをした。乱れた息が、襟足の黒い毛先を揺らす。そのまま後頭部の髪の中に鼻先を埋めると、首の後ろの血管がどくんどくんと脈打っているのを感じた。 海老沢が、潤んだ目をゆっくりと開く。 荒い息を吐く口の端からは、拭う余裕もなかった涎が垂れてシーツに染みを作っていた。 「ばぁか。ガチで勝負してどーすんだよ…… 痛くねぇ?」 「…… どっちが…… ?」 「どっちも。ちょっと、体位変えよ。今度おまえ上向け。」 一度抜いて、気だるそうな海老沢が身体を返すのを手伝う。結束バンドに縛られた海老沢のちんこは、濡れて光っていた。

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