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16.
額をシーツに埋めたまま、潤んだ目を細めた海老沢が首をひねってオレを見上げた。
「…… ちゃんと、欲しい?」
そう訊くと、海老沢が少し顎をひく。
うなずいたんだと思う。よくできました、そう言ってやりたいけど。
まだ、足りない。
「じゃあ、言えよ。」
つぽん、と、亀頭を埋めてやる。もう少し進めれば、イイとこに触れる、ギリギリのところ。それを咥え込んだ入り口のひだが、くびれを包むようにきゅっとすぼんだ。
「意地はってないで、そろそろ言えって。」
海老沢が、への字に曲げた口をぎゅっと結ぶ。
それを見て、少し引いた腰を、一気に奥まで突き出した。
「う゛あっ!」
掠れた悲鳴があがる。
自分の息まできれるほど、何度も引いては突き、虐めるように奥ばかりを攻めた。
肌がぶつかる音と、海老沢の啼き声が部屋に響く。
「ほら、言えよっ、早く…… っ」
「いあっ!あっ、あ、あ…… っ、やぁ…… っ!」
早く、言え。
そしたら優しくしてやるから。
つらそうな顔に興奮する。でも、シーツに染み込んだ涙に罪悪感も覚える。
虐めたい。優しくしたい。オレにすがりついて泣く顔を見たい。べたべたに甘やかして蕩かしてやりたい。
それは全部、同時にオレの中にある。
イかせて。
たった一言、そうお願いすれば、バンドを外して優しく抱いてやると言ったのに。
かたく閉じたまぶたの間から涙を流しながら、海老沢は開きっぱなしの口で枯れた喘ぎを漏らすだけで、頑なにその一言を拒んだ。
つらそうだ。本気でつらそうだ。
不安がよぎる。
大丈夫なのか…… これ。
海老沢はちゃんと、オレについてきてるのか?
大丈夫だよな。だって今日も、始める前にちゃんとセーフワードは確認したんだから。
本気で無理だと思ったらすぐに言えって、言ってあるんだから……
オレは腰の動きを止めて、身体を倒して海老沢のうなじにキスをした。乱れた息が、襟足の黒い毛先を揺らす。そのまま後頭部の髪の中に鼻先を埋めると、首の後ろの血管がどくんどくんと脈打っているのを感じた。
海老沢が、潤んだ目をゆっくりと開く。
荒い息を吐く口の端からは、拭う余裕もなかった涎が垂れてシーツに染みを作っていた。
「ばぁか。ガチで勝負してどーすんだよ…… 痛くねぇ?」
「…… どっちが…… ?」
「どっちも。ちょっと、体位変えよ。今度おまえ上向け。」
一度抜いて、気だるそうな海老沢が身体を返すのを手伝う。結束バンドに縛られた海老沢のちんこは、濡れて光っていた。
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