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54.契約

(あいつ、そんな気にしてたんだなぁ…… ) 俺は自室のベッドの上で、謝ってきた本郷の顔を思い出していた。つらそうな顔で震える、長いまつ毛と唇。 去年のクリスマスに酔った寝込みを襲われた俺は、ホントは全部覚えてたし、やっぱりそれなりにショックは受けてた。 身体に力が入らなくて、抵抗らしいことはほとんどできなかった。痛えって言ってんのにガンガン動いてきやがるし。 気持ち良さなんかカケラもなかったけど、射精()した後本郷が、ずっと「ごめん」って言いながら、べそべそ泣いてる俺の頭を撫でてくれて。俺より痛そうな顔で謝るから、バカじゃねぇの、そんな謝るくらいなら無理矢理すんなって思ったけど。 寝落ちして朝になったら、身体が痛い俺のために、朝食とか用意してくれてて。たぶん料理なんか作ったこともなかったんだろう本郷の目玉焼きは、下のベーコンが焦げてて黄身はほとんど生。あの時の、やたらとしょっぱい目玉焼きの味を、俺は一生忘れないと思う。 腫れたまぶたを冷やすための濡れタオルを渡されて、恥ずかしくなった俺がまるっと全部覚えてないふりをしたら、本郷が提案してきたのが「二回目(リベンジ)」だった。 年明け新学期前にしたその「リベンジ」で、俺は挿れる前に2回もイかされた。明るい部屋の中で脱がされるだけでも充分恥ずかしいのに、本郷の優しい手に身体中撫でられて。気持ちいいとこもくすぐったいとこも、ちょっとでも反応するとしつこく触ってきて、抑えてた声が、だんだん我慢できなくなった。 俺が1回イくまで、本郷は後ろには触らなかった。 一人でイかされた俺が 「これじゃ、確かめることになんねぇじゃん」 って言ったら、さすがに多すぎるだろって量のローションをつけて、そっと指を挿れてきた。 しつこいくらいに丁寧に触る指は、1本ずつ増やされて。そこが気持ちいいって、もう覚えてた俺の身体は、押されるたびに跳ねて。本郷の手の中に、2回目を射精()した。 本郷がおっかなびっくり自分のを挿れてきたのは、また俺が指でイかされそうになって、焦って止めた後。ずっと勃ってんのに、手と口で触るばっかで挿れてこないの、ほんとヘタレだなって、ちょっと可愛いと思ったけど。 散々慣らされてローションでふやかされた状態でも、やっぱりその圧倒的な熱と質量は凶暴で。 でも、そっと少しずつ腰を進めながら、不安そうに顔を覗きこんでくる本郷を見たら、痛いなんて言えなくて。歪んだ顔を見られないように、背中に腕を回してしがみついた。 そんなビクビクしてたらさ、「お前だってよがってた」なんて嘘、ばれんだろ。 そう思ったけど、俺は本郷の下手な嘘に、騙されてやることにしたんだ。

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