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第16話

この家は私にとってすごく居心地が良く、入り浸った。 ベッドと食器棚しか無かった家は、私が持ち込む家具や雑貨で、生活感が溢れていく。 ミーシェは、できるだけ帰ってくる、という言葉通り、二日に一度は来てくれた。 といっても、子供に家庭教師がついている昼間か、寝静まった真夜中の二、三時間だけだが。 ソファでごろごろとしていると、ガチャっとドアが開く音が聞こえた。 「ミーシェ。おかえり」 「あぁ、ただいま。こんな遅くになったが」 「ふふ、大丈夫だよ。嬉しいから。疲れてるでしょ?早く寝よ?」 ベッドはこの家に一つしかない。 最初の夜に一緒に寝てから、習慣づいたようにそれを続けている。 「先に、ベッドに入っていてくれ。シャワーを浴びてくる」 「うん、分かった」 今日は起きていて良かった。 たまに、寝ているときに帰ってきて、もったいないと感じる時があるから。 またすぐに帰ってしまうんだろうけど、少しでもいてくれるのなら構わない。 「ラウール、少し詰めてくれるか?」 少しベッドの端によると、ミーシェは布団に入りこんできた。 その胸に顔を押し付けると、頭をあやすように撫でられた。 その心地良さに目を細めているうちに、寝息が聞こえ始めた。 ……はぁ これまで、ミーシェとは何十回と一緒に寝てきたけど、手を出されたことは一度もない。 正直、私の容姿はそこらの女よりよっぽど整っていると思う。 身体だって細身だし、現に多くの男に求められてきた。 やっぱり、ミーシェは私のことを兄弟や友人としてしか見れないのだろうか。 それとも…、こんな汚れた身体じゃ、そんな気は起こらないのか。 こんなふうに優しくされたら、勘違いをしてしまう。 チャンスがあるのではないかと。 ただ心配をしてくれているだけだと理解はしているのだけど、期待を捨てることが出来ないでいる。 もしも私が、ミーシェ以外を知らない真っ白な処女だったら、抱いてくれていただろうか。 誰だって、中古品は嫌なものだろうから。

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