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第26話

「産まれてくる子はαかな、Ωかなぁ……」詠月は耳をお腹につけて中にいる我が子を思う。 「……俺はなんとなくαな気がする」 「どうして?」 「なんとなく。詠月さんそっくりな子が産まれそうな気がして……圧が強いから、いや、念……?」  皐月は顎に指を添えて眉をひそめる。 「ちょっと? 最近の君は僕にすごく冷たいよね。あたりがきついっていうかさ、最初はもっと可愛かったのに……」 「Ωのが良かった? すぐに一緒に住めなくなるんだよ?」 「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!! そうなったら施設に皆で住もう!!」  思わずぽかんとした顔で皐月は、駄々っ子にように必死に首を振る詠月を眺めた。そしてゆっくりと笑みを浮かべる。 「そうだね──、そんな未来が早く来るといいね。αもΩも、家族みんな一つ屋根の下で住める幸せな世界に──」  Ωが早く番を求めるのは、幼くして親と引き離されたのが原因なのだろうと皐月は思った。  Ωの子供たちは親の愛情に飢えたまま大きくなって、その代償をαに求めるのだ。 ──それは寂しいことではないのだろうか。  目の前の番は、優しく柔らかな眼差しで、皐月の両 掌を大切なものでも扱うかのように包み込み、生まれくる我が子を思って幸せそうに微笑んでいる。  皐月はその景色を、まるで夢の世界みたいだと思った──。  自分の妄想で描く漫画の世界の出来事が現実になったみたいに、好きな人と結ばれて、その人の子供を授かって、 これから家族で未来を紡げる。  漫画の世界では簡単にありえる世界を、Ωである自分が現実で送れるなんて、心のどこかでは信じていなかった……。だからこそ、夢見て、理想ばかりが膨らんでいく中、どこか冷めたもう一人の自分が遠くからそんなものは妄想に過ぎないと、諦め。行動を起こさない無頓着な自分を棚に上げて、自分なんかは何をしても幸せにはなれないのだと、一歩も踏み出していないのに、最初から決めつけていた。  詠月と出会えたことは本当に奇跡なのだ──。  本来ならば自分はあの合コンできっと最後まで一人浮いた存在で過ごし、一人虚しく施設に帰って延々と後悔しては己の不甲斐なさに泣いたはずだ。  だけど詠月は、皐月のほんの小さな、皐月本人ですら気付いてないであろう心の奥に潜む魅力に、可能性に、αの本能が働いたのだ。  たまたま来れなくなった友人の代わりが皐月で、  たまたま詠月の目の前の席に皐月が座り、  そんな偶然の重なりでしかなかったその全てを、詠月が運命に変えた。ほんの小さな意地悪を、出来心を、炎みたいな恋に変えた。

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