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第2話 日本語喋ってください、先輩
その日は、そこで別れた。
きらきらオーラを纏ったやつとしゃべるという非日常があったせいか、12時間寝てももやもやが残ったままだった。
慣れてないやつとしゃべるとなんかすごく疲れる。それと同じ。
まぁこんなこと言ったって、もう二度と関わることないだろうけど。
ふわりとあくびをしながら、今日も教室のドアに手をかけた。
「あ、愛楽くん!」
「……は?」
ドアを開けると、其処にはいるはずのない“先輩”がいて。
俺に眩しいくらいキラキラした笑顔を向けてた。
……なんだ、なんなんだ此奴は。
なんで教室にいる?自分の教室に戻れよ、いや純粋に。
嗚呼、眩暈がしてきた…
頭を押さえつつ、先輩を無視して机に座ろうとすれば、ぱしりと手をつかまれて。
は?え、なに、こわっ。
「…なんすか」
用ないんだったら手ぇ離してくださいよ。そんな意味を込めて問う。
俺の手をつかんでる先輩の手は小刻みに震えていて、さらにわけがわからなくなる。
なんで震えてるんだよ、これじゃまるで俺が虐めてるみたいじゃん。
なかなか口を開かない先輩に、若干の苛立ちを覚える。
早く席に着きたい。席について、曲聞いてたい。
そんなことを考えていると、ふっと先輩が顔を上げ
「…好きだ、愛楽くん。結婚を前提に付き合おう」
爆弾発言。投下。
「…は?…………は_?」
何を言ってるんだ、この人は。
確かに今の日本は、同性愛結婚が認められるようになった。
それによって男性同士や女性同士での夫婦が圧倒的に増えた。
だが、俺は世間がいくらそうなったとしても結婚する気などない。
俺は先輩の手を払い、多分いつも以上の無表情でこう告げた。
「……丁重にお断りします。四之宮 颯真先輩」
俺がフルネームで呼ぶときは、心の底から拒絶しているサインだ。
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