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通り抜けデート・次の日
「通り抜け、行ってきたんやて?」
登校するなり声をかけて来たのは、学級委員長だった。
東京で通っていた学校では成績優秀な生徒が選ばれるイメージだったが、大阪の学校では違った。
おもろい、ノリがいいという基準で選ばれるのだと言う。そういう訳で、委員長はやたら突っ込みがうまくて授業中、教師とのやり取りで何度も爆笑を引き起こす。
まあこれは委員長に限ったことではないけれど。クラスで人気のある奴はたいていこの技が使えるのだ。お笑いレベルという意味で、僕はスクールカーストの底辺にいると言っていい。
「うん。なんで知ってるの?」
「あいつが朝から自慢しとった」
自慢?
「通り抜けってそんなに自慢できるほど珍しいことだったんだ」
だったら誘ってくれた奴に感謝しないとと思っていたら。
「んなわけないやろ、毎年やってんのに」
委員長の呆れた声。
「自慢ていうのは……。ま、えーわ。どうやった?」
「桜? きれいだったよ、八重桜ってあんなに種類あるって知らなかった」
「ふーん。あいつが誘ったんやろ」
委員長は後ろのほうでクラスメイトと話している彼を見る。
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