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「堀田先輩、ちょっといいっすか?」
「おう」
後輩の手招きに遥清が気軽に立ち上がった。と、くるりと委員長に向き直る。
「絶対、何もすんなよ?」
「はよ行けや」
委員長に顔をしかめて見せてから、遥清は彼のところへ行く。
目が合った後輩くんはなぜか僕に向かって申し訳なさそうな顔でぺこりと頭を下げる。話の邪魔をしたと思ってるのかな、別にいいのに。
遥清が後輩と話し始めたら、委員長が僕に訊いた。
「ところで、べろちゅーはホンマにしたん?」
今朝の話だ。
「舐めたけどちゅーじゃない」と話そうとしたら先生が入って来て、その後は話題にならなかった。だからみんなもう忘れたんだと思っていたけど、委員長は覚えていたらしい。
「ちゅーじゃなくて、たこ焼き食べてやけどしたんだ。中が熱くて」
「ほうほう、そんで?」
「そしたら、見してみって言うからべろ出したら、遥清が舐めてくれて」
「あいつはホンマに……、で、何て?」
「舐めたったからすぐ治るでって」
「ほほー。んで、中原くんは平気なん?」
「うん、すぐ治ったよ」
「いやいや、そう言うことやないんやけど」
「?」
委員長の言いたいことが分からなくて首を傾げたら、頭にぽんと手が置かれた。
大きな手ががしっと回され、遥清が後ろから抱きついてくる。中庭のあちこちからざわっとした気配がした。きゃーという声も聞こえる。
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