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Page130:デートの時は僕を見て

「デート!デート!シュンくんとデート!」 前にシュンくんが選んでくれた服を着て、二人で外を歩く。 こんな気分良く出掛けるなんて久しぶりな気もする。 「ほら、ナオくん。あんま車道に出ちゃダメだよ。」 「はーい!」 シュンくんとのデートに舞い上がりながら、最寄りの駅に向かった。 「…んん?あれ?」 「ん?どうしたの?」 駅が見えてきた時、改札前に見慣れた男がいた。その男は、俺の知らない男子高生と何か話してるようで。 「ソウがいる。」 「ソウ?…あ、本当だ。」 「誰と一緒?」 「…さぁ、僕にもわかんない。」 ソウと話す、謎の男子校生。 黒縁メガネをかけ大人びた感じの彼は、ソウよりも少し背が低くて、よく見ると顔も整ってて…。 「ソウって、あんなイケメンの高校生の知り合いがいたんだなー。」 「そうだね、なんか意外。」 俺たちは若干その彼に興味を持ちつつ、近付いて行く。 「…あ?ナオ?…と、シュン?」 するとソウがこちらを見て、俺と目が合った瞬間名前を呼んだ。 「ヨッスー。」 軽く手を上げながら、二人と距離を縮める。 「お前ら、なんでここに…。」 「これからシュンくんとお出かけ!…で?ソウこそ、何してんの?」 「まさか援交とかじゃないよね?」 「はぁ!?ちげーよ!んなことするか!」 ソウはため息をつきながら、ガシガシと頭を掻いた。 「…こいつ、俺がバイトしてるコンビニによく来る客。」 「………。」 ピッと指を差すが、本人は無表情で何も言わない。 「…あー、名前は、瀬名川翔(せながわ しょう)。今は、まぁ、なんだ…たまたま会って…。」 会釈すらしようとしない彼に、ソウは困った顔をしながら紹介する。 だがその瞬間、彼の目付きが変わった。 「たまたま会ったんじゃなくて、デートだろ。」 「はっ!?」 「えっ!?ソウとデート!?」 「…へぇ。」 え!?デート!?今デートって言った!? 「オイィ!!お前何言ってんだよコラァ!」 「事実じゃん。…何隠そうとしてるわけ?その二人、デキてんでしょ。」 「そ、それは…っ、」 「え!?わかるの!?」 ショウくんの言葉に、思わず反応した。 だって俺たちは「デート」なんて一言も言ってないし、男が二人で歩いてても付き合ってるなんて思わない。 「…まぁ、あんたの事は知ってるから。」 「えー!?そうなの!?わー!なんか俺、有名人!?」 知らない人が俺の事を知ってるって、なんかとてもテンションが上がる! 「…さ、邪魔しちゃ悪いし、電車も来るし…そろそろ行こうか、ナオくん。」 興奮する俺の腕をグイッと引っ張り、改札へ向かおうとするシュンくん。 俺は「えー」と眉を下げながらも渋々付いていく。 「ソウ!今度詳しく!」 じゃーなー!と二人に手を振って、俺はシュンくんと改札を通った。 「ねえねえねえ!シュンくんねえねえ!!」 「はいはい、なになに。」 「ねえ!あの二人ってマジだと思う!?」 乗る電車が来るまで、あと数分。 階段を上がりホームに着いた時、俺はシュンくんの腕を掴みながら目を輝かせる。 「マジなんじゃない?…少なくとも、彼は。」 「彼って、ショウくん!?」 「うん。」 「へぇ!ショウくんは、ソウが好きなんだ!」 「断言はできないけどね。」 シュンくんの言葉にワー!と再びテンションが上がる。 だって!だってあの子、ソウのことが…!キャーッ!!知り合いの恋愛事情がこんなに楽しいものとは! 「ナオくん。」 「んっ?」 ムフフッとニヤついていたら、シュンくんが俺の腕を引っ張り、自分の方へ引き寄せた。 「デート中に他の男の事考えるの、僕的に面白くないんだけど?」 「…っ、ご、ごめん、なさい…。」 耳元で囁かれ、ドキッと胸を鳴らす。 普段よりも少しトーンの低い声、しかも軽く息がかかる距離で、俺の頭の中は一瞬にしてシュンくんでいっぱいになる。 「いいよ。」 そして、フッと笑ったシュンくんが俺から離れていくのを見て「あーあ、外じゃなかったら今めっちゃキスしてたのに…」なんて思った。

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