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第21話

 完成したオムライスを前に、テレビでは肉弾戦ヒロインアニメのちょうど戦闘シーンが流れている。結局、自分の分も目玉焼きとトーストを作った。食べれなかったら松本に後を任せることに勝手に決めて、食卓につく。  いただきます、と行儀よく手を合わせる松本家のお二人に倣って自分も手を合わせた。こういうことすんの何年ぶりだろ。 「やっぱり誠一くんのごはんはおいしいね」 「うん! お兄さん料理うまい! おいしいよ」 「そりゃどうも……こんなんでよければいつでも作りに来るよ」  この家だと、簡単な飯を作ってやっただけで二人からべた褒めされる仕様だ。照れるよりもこの程度で大絶賛されるのがなんだかもぞもぞしてしまって、思わず謙遜に走る。あゆみちゃんが首を傾げた。 「え、お兄さん、うちに住んでくれないの?」 「……へ?」 「おいちゃんが、誠一くんも一緒に暮らすことになったらどうする? ってこの間、あゆに聞いて――」 「あああああゆ! あゆ! それトップシークレット!」  聞いたことも無いような悲鳴を上げて、松本がわたわた慌て出す。おいちゃんまだ話してなかったの、と小学生女子に半眼で睨まれ、松本はその場で小さくなった。 「……えっと」 「ご、ごめん誠一くん……その」 「俺……つまり、嫁入りすればいい、感じ?」  セフレじゃなくてか。ひょっとしなくてもセフレやめようって、そういうことだったわけか。  真相に辿り着いて、脱力した。こんな馬鹿みたいな話あるか。これじゃあ自分は勘違いに泣いて苦しんで、とんだ道化じゃないか。  彼が、初めてお手製パスタを食べた時と同じ類の顔をする。 「へへ……夫にしてもらおっと……あ」 「ん」 「誠一くん、笑ってくれたね」 「人生って素晴らしいなーって思って」  そうだ。自分でも馬鹿げてるとは思うけど。今ふいに、そう思ってしまった自分がいるのだからもうしょうがない。 「え、じゃあ僕のギャグは?」 「五点」 「ひどい」  ――life is wonderful.  あんたとならば、人生は素晴らしい。

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