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第12話 醜態と強い眼差し

 晴は暖かいぬくもりに包まれてゆっくりと覚醒していった。心地良くて再び眠りに誘われそうだ。それでも晴の中に疑問が生まれる。いつも1人で寝ているセミダブルのベッドにぬくもりがあるはずはなかった。 (ん?ぬくもり?えっ、何?) 「えっ!!!」  慌てて身体を起こすと胸焼けと頭痛に襲われた。これはまさしく二日酔いだ。 「うッ!気持ち悪い……」 「おい、大丈夫か?」  晴の横で大きな身体を縮める様に横になっていた睦月がゆっくりと起き上がり晴の肩に手を置いた。その時、晴の中で断片的で薄っすらだった記憶が繋がった。お酒によってもたらされた思い出したくもない醜態に晴の顔は真っ青になる。ゆっくりと隣を見ると苦笑する睦月がいた。 「ごめん睦月。僕スーツに……」 (恥ずかしい。昨日酔って、食べた物みんな睦月の服にリバースしたんだ) 「いや、止めなかった俺も悪かった。お前顔に出ないタイプなんだな」 「うん……」 「お前の服もかなりの状態になったから、まとめて風呂使わせてもらったぞ」 「えっ。嘘ッ」  晴はその言葉で自分が全裸だと気が付いた。そして部屋の綺麗に片付いた様子にすべてを睦月にさせたのだと理解した。はからずしてお風呂に一緒に入りたいと言った晴の言葉が叶えられた事になった。   「本当にごめん!」  晴と同じで全裸の睦月の前で手を合わせ、頭を下げる事しか出来なかった。 (新作ケーキを食べてもらってお礼を僕がしないと駄目なのに迷惑しかかけてないよ~) 「そうだ、睦月の服をどうしよう」  働かない頭を精一杯働かせて最初に思い浮かんだのはそのことだった。晴の服では絶対に入らない。睦月のスーツを汚してしまっては着る服がなかった。 「それは二日酔いの所申し訳無いけど、店が開く時間になったら買って来て貰えないか?どうせ晴の服は着られないと思うし」 「そうだよね。じゃあ、そのお金お詫びに僕が出すよ」 「いや、俺に出させてくれないか?」 「?」  首をかしげる晴の頭を睦月の大きな手がポンポンとしてきた。  それから頬を撫でる降りてきた睦月の手の感触を頬に感じて晴は困惑の表情を浮かべた。睦月にお金を出させるなんて心苦しい。そんな晴に睦月はなおも言い募った。 「どうか俺にここに来る理由を与えて欲しい」 「ど、どういう事?」 「もっとお前と親しくなりたい。もっと側にいたい」  睦月のその言葉に一気に顔には熱が集まった。そんな晴を熱い視線が貫く。 「それって、えっ、なんで?」  慌てて身体を引こうとした晴を睦月は許さず抱きしめられていた。 「俺をお前の恋人にしてくれないか?付き合ってほしい。お前が好きだ」 「え、何それ……え?」  固まった晴の身体の耳元で聞こえる言葉はとってまるで夢の中で聞いている言葉にしか思えなかった。それほどに現実とは遠い言葉だった。それは昨夜、『ご褒美欲しくないか?』と言った睦月に唯一心の中で望んだものだったからだ。 (どうして?これは夢?夕べ僕何かした?記憶が途切れ途切れのところが……。お酒の勢いで何か僕余計なこと言った?)

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