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第39話 これからの心配
自然と顔の距離が近づき、優しいキスが続けられた。
「もう少し付き合ってくれるか」
「もちろん」
鼻と鼻を擦り合わせて返事をした晴は睦月に頬を寄せた。
晴を抱きしめたまま、起き上がった睦月は繋がったまま今度は晴を下に組み敷いた。
睦月の熱い視線に晴の頬は朱に染まる。熱い交合は晴が意識を失うまで続いた。晴は意識を失う寸前「ありがとうな、晴……」そんな言葉を聞いた気がした。
晴が意識を取り戻したのは睦月の胸の中だった。身体は身ぎれいにされていて睦月を見ると寝顔から険しさは薄れているように見えた。
見つめていると瞼が震えて睦月の瞳が開いた。
「大丈夫か晴?」
「うん、大丈夫」
静かな声音にも暗さはなかった。そこにはいつもの睦月がいた。そんな彼に戻せた時間を過ごせた事に心から晴はほっとする事が出来た。
「晴、和樹の動き次第だが、会社を辞めようと思う。もう、あの人の元では働けない。そんな俺でも付いて来てくれるか?」
「もちろん、僕はどんな睦月でも付いて行くよ、僕が雇ってあげても良いよ~」
「それも良いな。いつでも一緒にいられる」
「うん、僕は睦月が、睦月らしく生きてくれるなら何でも良いよ。どこまでも、いつまでも側にいるから」
額と額を合わせて2人の気持ちを確認にしあい晴は睦月からのバードキスを受け入れて甘い時間を過ごした。
それでも、その時の晴のおもてには表さない心の中では雫の心配に満ちていた。願わくば少しでも安らかな眠りに包まれていますように。そう願いながら睦月の腕の中で短い朝までの時間を過ごした。
そして部屋に常備しているスーツに着替えて朝早くに睦月は出勤していった。晴もカフェの準備をいつものように始め、まだ夜も明けきらない外に晴は出てみた。
冷たい冬の空気を吸い込んで、肺にギリギリまで満たして、心配事も全て一緒に出すように思いっきり吐き出した。それで心配事が消える訳ではないけれども気分をすっきりさせるにはぴったりだった。
雫からのバイトを休ませて欲しいの電話が来たのはカフェが始まる時間よりも早い時間だった。沈んだ声音が聞いておられず、ゆっくり1週間休んで良いよととっさに言っていた。
びっくりしている雫に、「大サービスだよ、その声が元気になったら出ておいで」と優しく伝えておいた。晴に出来ることは明るく振る舞うしか雫にしてあげられることなのが切なかった。
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