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第48話 特別な場所
「うわー、天の川が見えるよ」
睦月のお気に入りポイント到着するや否や晴は外に飛び出した。
「晴、怪我するなよ」
「うん、分かってる」
ひとしきり夜空を堪能して首が痛くなった晴は睦月の元に戻ることにした。
「睦月ってマジシャン?こんなマットまで敷いてまるでキャンプだ」
「星空観察って言えばこれくらい普通だろ?シュラフがあれば防寒にも鳴るしこれはダブルタイプだから2人ならぴったりだろ?」
晴はシュラフに座る睦月に飛びついた。
「おっと、どうした晴?」
「睦月が僕の彼氏で良かった」
「それは俺の台詞だな。ありがとうな晴。晴、ちょっとここに座ってくれないか?」
「うん、良いよ」
早速、睦月が用意してくれたシュラフの中に入って睦月の横に腰を下ろした。
「晴、これからの一生俺と生きてくれないか?」
「えっ!それってプロポーズ?まさかだよね」
「そのまさかだよ、2人でデザインした指輪にしたいからこれは仮の指輪だけど、受け取ってくれないか?」
晴の目の前にはシンプルなリングが2つ、リングケースに並んでいた。睦月の用意したランタンの明かりのもと、それは星空よりも輝いて見えた。
「うん、あ、はい末永くよろしくお願いします」
晴は睦月に深く頭を下げた。ポトリ、ポトリと落ちる雫。
「顔を上げて」
晴の顔は涙で濡れていた。その涙を睦月の手が優しく拭い額にキスを落とした。だけどその行為は逆効果になり晴の涙腺は余計に崩壊してしまった。
「ずるいよ睦月は、格好良すぎだよ」
睦月の胸元を拳で叩きながらぐずるように晴は泣き続けた。
「泣きすぎだぞ、まだこれは仮の指輪だぞ」
「バカ、そういう意味じゃないよ」
「分かったからそんなに暴れるな、ほら」
抱きしめてシュラフの中に一緒に入り込んだ。
「ほら、泣き止んで」
睦月は背中をトントンとあやすように晴をなだめた。
晴は睦月の温もりに涙も徐々に落ち着いてきた。顔を睦月の胸元に埋めて心音を聞きながらこの自分に永久の愛情を与えてくれる彼の大きな愛に包まれていることを改めて心に刻んでいた。
「晴、指輪を受け取ってくれるか?」
鼻をすすりながら顔を上げて晴は何度もうん、うん、頷いた。
「付けてください」
自ら手を睦月の前に差し出した。その差し出された手に指輪が素早く嵌められ、慣れない感触に、晴の心は擽ったかった。
「俺にはしてくれないのか?」
「あっごめん」
シュラフに寝転んだまま睦月の左手に対の指輪を嵌めた。そして晴はその指を愛おしげになでつけた。
「あっ、ごめん。寝転んだままの指輪の交換になっちゃった」
「いいさ、本番では格好良く決めさせてくれ」
「本当に作るの?」
「もちろんさ。友達にジュエリーデザイナーがいるから依頼しに行こうな」
「えっ、本気でデザインから依頼するの?」
「あぁ、この世で俺たち2人だけの指輪だ」
「嬉しいな。この場所は僕にとって特別な場所になったよ」
「それを言うなら俺にとっても特別な場所だぞ」
睦月の腕枕で横になって星空を眺めると先程よりも星は輝いて見えた。
「ほら、あそこにひしゃくのような星座ががあるだろ、あれがこぐま座だ」
「僕たちこんなに無数にある星たちに祝福されているんだね」
「そうだな」
「睦月、キスして」
睦月の手が晴の顔の輪郭をたどり、目、鼻、口に触れると晴はその睦月の指を噛んだ。それを合図に濃厚なキスが始まった。
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