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第14話 微睡

――じゃあ、仕事行ってくるからね」  ドナは甘い声でシルヴィオに声をかける。ベッドに寝転がったシルヴィオは、小さくコクリと頷いた。  あれから30分ほどロッキングが外れることなく、拍動に合わせ断続的に続けられた射精の感触が未だに残っている。もう夜も明け風呂にも入らされたというのに、身体はずっとドナのことを覚えていた。  今日も仕事があるからと早々に出かけてしまう。ドナが抱いてくれたお陰で随分と身体は楽になったが、まだ発情期ではあるため外に出ることはできない。全てをドナに任せきりにしてしまい罪悪感が溢れる。  オメガとはいえ、あの喫湯店の店主は自分で、ドナは店には関係のない恋人なだけなのに。番いでもないただの恋人。だから、そこまでしてもらう必要だって元はないはず。  人を雇わなければいけないか。最近は客足も増えてきた。シルヴィオでもきちんと対応できるベータの誰かをと考え、ベッドの中で構想を立て始める。  ドナ以外のアルファは怖い。同じオメガは危険が増す。だからベータ。圧倒的に数も多いのだから探せばきっと働きたい奴も見つかるだろう。問題は報酬か。  もう少し、稼げるようになれればいいのだけれど。シルヴィオは嘆息し枕に顔を押し付けた。  ドナの匂い。甘くて爽やかで、ハーブの匂いもする犬獣人特有の匂いだ。発情のピークは抑えられているはずなのだが、また身体が疼き始めてしまう。  今日、番いにしたいとドナは言っていた。番いは行為をしながら頸を噛むことで成立する。  早く噛まれたい。自ら頸に爪を立て、波が収まるのを必死で待つ。  あのふかふかの腕に包まれて、鋭い爪を立てられて、首をへし折られるほどの強さで噛まれたい。ドナが相手ならどうされたって構わない。  ロッキングするのは子供を孕ませるため、とドナは言っていた。獣人の交尾はコミュニケーションではなく子作りのため。  子供、昨日のあれでできてしまっただろうか。自分は男なのに、オメガだから。  ベータの頃、自分が孕むなんて思いもしなかった。当たり前だ、男で孕むのはオメガだけ。自分はずっとベータだったから。  人間と獣人の子供。見たことはあるが、獣寄りであったり人寄りであったり姿は様々だった記憶がある。ドナに似ていれば可愛いだろうが、自分に似ていたらドナが取られてしまうかもしれない。  ……それは、嫌だ。  1人でいるから、微睡の中も余計なことばかり思いつく。  帰ってくるまでずっと眠っていよう。シルヴィオは布団を頭まで被り、眠りにつくため硬く目を閉じた。

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