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第2話
あなたのことずっと見ていました
大きな体。柔らかな心。
皆が皆貴方に支えられ生かされていた。
貴方はふらりとここから離れて散歩にいくこともありましたね。
そんなときは決まって同じ人へ会いに行くのです。
初めてあの人とお会いしたのは確かまだあの人が幼い頃でしたね。
急な雨に降られて雨宿りをしていたあの人に手を差しのべたのは貴方でした
「ほら。泣かないで。もうすぐお迎えが来るよ」
「あなたは誰?」
「ん~?ただのおじさん」
「おじさん?とても綺麗なのに?」
「あははっ!ありがとう。ほら。かか様がお迎えに来たよ。お行きなさい」
「ありがとう。綺麗なお兄ちゃん」
あの人の家のお庭にはそれはそれは立派なご友人がおられるそうですね
「おぅ。また来たのか?あぁ。そういやぁ。あの日はうちの坊を守ってくれてありがとうな」
「いいえ。私は腕を貸しただけですよ。しかしながら…あの人は…とても可愛らしいですね」
「あははっ。惚れたか?」
「さぁ?どうでしょう?」
「お前も報われぬ恋などせずともよいのではないのか?」
「貴方に言われたくはありませんよ」
「それもそうだな。なぁ桜樹」
「はい」
「お前も気付いているとは思うが。私はもう長くはない」
「えぇ。きっと坊は泣くでしょう」
「そうだな。だから。たまにでいい坊の様子を見に来ちゃくれないか?」
「えぇ。構いませんよ」
そのお話の翌月あの方は逝ってしまわれた
貴方は悲しみにくれるまもなくあの人に会いに行きましたね。
そしていつしかあの人は貴方を…そしてあれだけ大好きだったあの方を忘れてしまわれました
「これが人の摂理と言うものだ」
そう言いながら相も変わらずそっと見守っていらした。
あの人が嫁を取るときも側で見守っていた。それはそれは優しい顔で。
貴方は誰にでも愛されるのに貴方が思う人には心が通じなかったけれどずっとずっと笑ってらした。
私はどうにも我慢ならなくなり時は満ちてあなたのもとへ舞い降りたのです。
貴方は多くの想いを私にぶつけてくださった。
とてもとても幸せでした。この命尽きるその瞬間まで貴方は愛してくれました。
もう…私に思い残すことはない…そう思っていたのに…
貴方があんなに焦がれたあの人が私たちを救ってくださった。
立派なあの方のいらしたあの場所でもう一度命を吹き込んでくださった。
やはりあなたの目は確かでしたね。
私はとてもとても幸せです。あの人が消えてしまったとしても私はあなたのお側におります
「あぁ…あなたも逝ってしまわれるのですね」
「私はもう人の割には長く生きた。
幼い頃のあのこと忘れていてすまなかった。君に助けてもろうたのに私としたことが」
「いいえ。貴方はお幸せでしたでしょ?私にとってそれが一番の褒美ですよ。私のこと皆のこと救ってくださりありがとう。奥方が貴方の元へ行くまで私が見守っています。だから。ご安心を。ゆっくりおやすみ下さいまし」
「あぁ。ありがとう。来世でもここへ戻ってきたいよ」
「えぇ。私もここでお待ちしています。私の命が尽きるより前にはお戻りくださいね」
「あはは。そうだな。おや。お迎えだ。また会おう。友よ」
ふっと天から召された牛車に乗りあの方はいかれた
奥方も後を追うように…
「なぁ。桜莉」
「はい」
「あの人は幸せだったろう」
「そうですね。ほら見てくださいまし。」
「ふふ…案外早いお帰りだったな」
「ねぇ。桜樹さま」
「なんだ?」
「次の命を作りませんか」
「そうだな。桜莉」
あの人たちも私たちもこれからも命を繋いでいく。
命永劫。
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