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7-共鳴-最終章

狭霧を見つめる楓の鋭さは。 魂ごと欲しいがため、魂ごとぶつかってくる故に放たれた殺気でもあった。 惜しみなく注がれる切なる熱に中てられた狭霧は急に部屋の中が暑く思えてきた。 ジャケットを羽織ったままでいる楓を改めて見、少し笑う。 「それ、脱がないのか?」 狭霧に言われ、楓も小さく笑うと「寒いの、苦手なんだよ」と答えた。 初めて楓の苦手とするものを聞かされた狭霧はそっと眉根を寄せた。 夕暮れ時、楓はどれくらい俺を待っていたのだろう。 冷たい風に身を曝し待っていた彼に、俺は……。 「まぁ、もう脱いでもいいな」 「……楓……」 今までの声色とは違う、紛れもない微熱を伴う呼び声に、ジャケットを脱ぎかけていた楓は動きを止めた。 前のめりになった狭霧は楓の唇にキスをする。 初めて自分から及んだキスだった。 「抱いてほしい」 顔を離した狭霧は楓に希う。 狭霧の上体を咄嗟に支えた楓はその両手を仄赤く染まった頬に滑られて、確かな温もりを掌で包み込んだ。 「でも、お前、手は」 「大丈夫」 痛みはあるが動かせないことはない。 狭霧は心配してくれる楓に微かに笑ってみせた。 「それとも、もしかして、今はそういう気分じゃ……」 たどたどしい口調で狭霧が言い終わるより先に楓は唇で遮った。 真下から深く口づけられる。 激しく口内を乱されると狭霧は掠れた嬌声を洩らした。 本当に息の根が止まりそうな、切ない断末魔じみた声色だった。 「ンン……ッ……」 楓は薄目を開けてベッドに組み敷いた狭霧を見下ろした。 繊細で涼しげな睫毛は震え、眉根を寄せて身悶えるその表情は何よりも扇情的で。 濃厚な花粉を撒き散らして楓の何もかもを滾らせ、目の前に終わりない絶頂を横たわらせる。 昔と何も変わっていなかった。 もっと深く、どこまでも深く、ただ一つになりたい。 誰の手にも渡らないよう、自分の一つにしてしまいたい。 貪欲な上を湧き起こらせる唯一の存在だった。 「……楓……」 ジャケットを脱ぐため楓が狭霧を跨いだまま体を起こすと、唇を濡らした彼は両肘を突いて上目遣いの視線を頭上を静々と投げかけた。 「シャツも……脱いで」 楓は言う通りにした。 上体に纏っていた服を素早く脱ぎ捨てるや否や、狭霧を抱き起こし、緩んでいた唇に再び口づけた。 生温い吐息と舌を貪って、互いの正面を密着させ、きついほど五指に髪を絡ませた。 「……待って、楓」 ふと上擦った声に止められて、楓は胸の奥底に渦巻く欲望の波を懸命に沈めて狭霧を覗き込んだ。 「痛むのか?」 「ううん、違う……」 狭霧は露になった楓の肩に手を押し当て、力を込めた。 「狭霧?」 ベッドに押し倒された楓が戸惑いの視線を狭霧に向ける。 狭霧は楓の真上で四つん這いになって、今まで自分に覆い被さってきた彼の位置に成り代わると、上下にゆっくりと律動する逞しい胸板に触れた。 「いつも楓にされてばっかりだったから……」 重厚な艶のある浅黒い皮膚は触り心地がよく、もっと間近で見ようと、狭霧は姿勢を低くした。 「おい、別に無理しなくても」 「無理なんかしてない」 鎖骨の下に額を寄せた狭霧は十字を切るように真摯な声音で言った。

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